上部消化管グループの部門紹介

上部消化管グループは主に胃と食道の病気を扱うグループです。
胃癌、食道癌に関する専門領域の知識と技術を基に、安全に根治性と低侵襲性に加えて術後の生活の質(QOL: Quality of life)を考慮し、可能な限り個々の患者さまのご希望に応えることを目標にしています。
我々、横浜市立大学附属市民総合医療センター病院 消化器病センターへは、ご高齢、糖尿病、脂質代謝異常や心臓、肺、肝臓、腎臓や脳などに併存疾患をお持ちの患者さまも多くご紹介いただいております。コメディカルやそれぞれの専門科チームとのスムーズな連携のもとに、治療を進めています。

  • 上部消化管グループは消化器外科専門医6名(うち指導医は3人)、内視鏡外科学会技術認定医3名、食道学会外科専門医2名が所属しており、専門性の高い高度な医療を提供いたします。
  • 腹腔鏡・胸腔鏡手術を積極的に取り入れ、体に優しい手術を行っています。
  • 進行癌に対して、集学的治療(術前化学療法→手術→術後補助化学療法)を行っています。
  • 客観的なエビデンスを構築するために、臨床試験にも積極的に参加しています。
  • チームミーティングや電子カルテを介して、医師、コメディカル間の情報共有がスムーズに行われています。
  • 消化器内科(内視鏡部)と放射線科とカンファランスを行い治療方針を決定しています。

診療分野

対象疾患

胃癌、その他の胃腫瘍(GISTなど)、食道癌、その他の食道疾患(食道アカラシアなど)

症状

胃疾患

胃がもたれる。食欲が低下した。みぞおちが痛い。嘔気。便が黒い。吐血した。市販薬で改善がない。健康診断で胃の精査や手術を勧められた。など

食道疾患

食物がつかえる。胸やけがする。食事するとむせる。吐血した。健康診断で食道の精査や手術を勧められた。など

外来診療

消化器病センターを初めて受診された場合、まずは治療方針決定のために「癌の状態」、「全身の健康状態」について検査を行います。
速やかに治療を開始するために、初診当日に可能な検査を行い、必要な検査(CT検査、内視鏡検査、消化管造影検査)を予約します。
治療方針は、専門医がチームで協議のうえ決定します。
内視鏡治療の適応に関しては、内視鏡チームと綿密にディスカッションしています。

検査内容
  • 上部消化管内視鏡
  • CT検査
  • 上部消化管造影
手術の待ち日数・時間
胃癌 手術 2-3週間
化学療法 1週間
食道癌 手術 3週間
化学療法 1週間
放射線治療 1-2週間

上部消化管グループの胃癌診療の特徴

  • 胃癌の中でも早期胃癌は増加傾向にあります。
    当センターでは患者様の身体への負担をできるだけ軽くするため、内科医師と連携を密にとり、内視鏡治療が可能な症例については内視鏡的粘膜切除術(EMR、ESD)を施行しています。また手術が必要な場合は、身体への負担を軽減することを目的として、早期胃癌に対しては腹腔鏡補助下手術を数多く行っております。
  • 「腹腔鏡手術」とは、腹腔鏡という直径約1cmの細長いカメラをお腹の中(腹腔)に入れ、そのカメラからの映像をモニターに映して、そのモニターを見ながら行う手術のことです。この「腹腔鏡手術」の利点として、(1)おなかの傷が小さいこと、(2)手術後の痛みが少ないこと、(3)お腹のなかの環境に与える影響が少ないために手術後の胃腸運動の回復が早く、術後早期から食事が摂取できること、(4)入院期間が短く、仕事や家庭への復帰が速やかなこと、(5)腹腔鏡の近接、拡大視効果により、より繊細な手術ができること、などが挙げられます。近年では多くの施設で、患者様にとって身体への影響が少ない「腹腔鏡手術」が選択されるようになってきています。
  • 進行胃癌に対しては、根治性を重視した手術を行い、全国有数の治療成績を常に維持しています。

胃癌の症状と診断

  • 胃癌の症状は、上腹部痛、食欲不振、悪心などの症状がみられますが、無症状のことも多く、健康診断などでたまたま胃癌が見つかる患者さんも多くいます。
  • 胃癌の診断には、上部消化管造影検査(バリウム検査)、上部消化管内視鏡検査、CT検査、腹部超音波検査などを行い、総合的に病気の進行度を評価します。 必要に応じて、PET検査、超音波内視鏡検査などを行い、病気の進行度を総合的に評価します。また、手術に際して問題がないかどうかの検査(心電図、採血、呼吸機能など)も同時に行います。

胃癌の治療方法

進行度、併存疾患、既往歴などから患者様ごとに最適な治療方針を決定しています。

内視鏡治療

組織型が分化型腺癌で、潰瘍がなく、病変の深さが粘膜 層までならば、原則的に胃癌の大きさには関係なく内視鏡治療の適応になります。また、潰瘍がある場合は30mmまでの大きさならば、内視鏡治療の適応になります。しかし、病変の深さが粘膜下層を越えている場合や、長径が31mm以上で潰瘍がある場合、または分化型腺癌以外の組織型の場合は、リンパ節転移の リスクがあることから手術の適応になります。

手術治療

早期胃癌の場合は、原則的には腹腔鏡下胃切除術を 行っています。進行癌の場合は進行度に応じて腹腔鏡下手術か開腹手術で胃切除術を行っています。胃癌の部位や進行度によって、胃の切除部位や範囲、再建方法が異なります。術前に診断した進行度、併存疾患、既往歴などから患者様ごとに最適な治療方針を決定しております。近年は上部胃癌に対して進展範囲に応じて胃全摘を回避し噴門側胃切除を行うことにより臓器温存を図っています。これは患者様ごとに異なりますので、手術に際しては、これらを 詳細にご説明し、治療に十分に納得をいただいた上で手術を行います。

化学療法

癌の患者様に対して抗癌剤を投与する治療法を化学療法と呼びます。胃癌の進行度でStageIIおよびIIIの患者様において、手術後にTS-1という抗癌剤の内服薬を1年間服用すると治療成績が向上することが証明されました。このエビデンスに基づいて、進行度が合致する患者様には1年間の服用を術後補助化学療法としてすすめています。さらにはStage IIIの胃癌患者さんには内服の抗がん剤に加えて点滴の抗がん剤を加えることによりさらなる再発率の低下が証明されており、術後の患者様の状態に応じて術後化学療法の内容をチームで協議した上で患者様にすすめています。また、胃癌が進行しすぎて切除ができなかった場合、手術をしても転移や腹膜播種等で癌を完全に取りきれなかった場合、手術後に再発した場合などにも化学療法を行います。
ここ数年間で、胃癌に対する化学療法の治療成績は大幅に改善しました。これは、いくつかの新しい抗癌剤の使用と投与法の工夫によるものと考えられています。

手術件数

胃癌の手術件数

術式別手術件数 2019年

手術件数(件)
幽門側胃切除術 開腹 9
腹腔鏡 54
胃全摘術 開腹 11
腹腔鏡 9
噴門側胃切除術 開腹 7
腹腔鏡 13
胃部分切除術 開腹 0
腹腔鏡 0
残胃全摘術 開腹 1
腹腔鏡 1
その他 12
合計 117

腹腔鏡手術の割合

腹腔鏡手術の割合

年々、腹腔鏡手術の割合が増加し、現在は7割以上が腹腔鏡手術となっております。

治療成績

【生存率】

治療成績
【生存期間 (月)】

全国の大規模施設と同等な良好な治療成績を常に維持しています。

上部消化管グループの腹腔鏡手術の特徴

通常の腹腔鏡手術

通常の腹腔鏡手術

トロッカー数を減らした腹腔鏡手術

上部消化管グループで行うトロッカー数を減らした腹腔鏡手術
上部消化管グループで行うトロッカー数を減らした腹腔鏡手術
 

横浜市立大学病院付属市民総合医療センターの胃切除クリニカル・パス

術後の回復を促進するようなプログラムとなっています。

上部消化管グループの胃切除クリニカル・パス
上部消化管グループの胃切除クリニカル・パス

GIST診療の特徴

GISTは、消化管間質腫瘍を示す英語Gastrointestinal Stromal Tumorの略称で消化管に発生する悪性腫瘍の一種です。新たに診断される患者さんの人数が10万人に1人と少ない腫瘍で、発生部位は胃や小腸が多く、大腸や食道は稀です。早期では多くの場合無症状ですが腫瘍が大きくなると出血症状が出ることがあります。治療は切除が原則ですが、非常に大きい場合や転移を認める場合は薬物治療を行います。当グループでは消化器内科医師と合同で行う腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)を積極的に行っており、内視鏡で可能な範囲で腫瘍を切除することにより胃の切除範囲を小さくしています。腫瘍の大きさや深さによっては内視鏡のみで切除(EFTR)が可能です。

胃GIST手術件数

胃GIST手術件数

上部消化管グループの食道癌診療の特徴

  • 手術では、術中・術後の身体への負担を軽減することを目的にして、胸腔鏡・腹腔鏡を用いた鏡視下手術を積極的に行っています。
  • 食道癌の治療は病気の進行度によって異なります。進行度は「Stage」として表されます。
    Stageは0からIVbまで6段階あり、リンパ節転移の可能 性が極めて低いStage0では内視鏡的粘膜切除術を行っています。Stage1以上では鏡視下手術または放射線化学療法(放射線治療+抗癌剤治療)を行っています。
    それぞれの患者様の治療方針を決定するためには、まず、いくつかの検査を行って正確な診断を立てることが大切です。その上で、患者様の年齢、併存疾患等、様々な点を考慮して治療方針を決定しています。治療を進めるにあたっては、患者様とご家族の方に、「現在の病状とそれに対する治療の妥当性」について十分にご説明をさせて頂き、ご納得をいただいた上で、治療に臨んでいただくことを心がけています。

食道癌の症状と診断

食道癌の症状は、嚥下違和感、つかえ感、胸焼けなどの胸部(食道の周囲)を中心とした症状がみられますが、無症状のことも多く、健康診断などで見つかる患者様もいます。食道癌は他の癌と比較すると予後の悪い疾患です。しかし、早期発見により良好な治療成績が得られるようになってきています。
診断は、上部消化管造影(バリウム検査)、内視鏡検査、CT検査、PET検査などを行い、病変の大きさや深さ、リンパ節転移や他臓器への転移の有無などから総合的に病気の進行度「Stage」を評価します。

食道癌の治療方法

進行度、併存疾患、既往歴などから患者様ごとに最適な治療方針を決定しています。

内視鏡治療

リンパ節転移の可能性が低い、病変が粘膜層のしかも浅い部位に限局する癌に対して行います。

手術治療

早期癌から進行癌まで、癌の根治を目的に行います。食道 癌に対する手術の場合、患者様がうける手術の侵襲は小さくはありませんが、悪性の部分を可能な限り取り除くことができることが、手術の最大のメリットでも あります。患者様の負担を最小限にし、さらに胸腔内の深い部分のリンパ節を確実に取り除くことを目的に、当院では食道癌に対し鏡視下手術を積極的に施行しています。

放射線化学療法

病期によっては、長期成績は食道切除には劣るものの食道癌に欠かせない治療法として確立しています。食道癌とリンパ節などの転移巣をターゲットとして、放射線治療と抗癌剤治療を同時におこない、およそ2ヶ月間の治療期間のうち約2週間の入院治療が必要となります。

放射線療法

食道癌は放射線に対して感受性が高く、前述の化学療法との組み合わせで、効果がより期待できます。しかし、年齢や併存疾患等で放射線化学療法を行えない患者様には放射線単独療法を行います。

化学療法

癌が遠隔転移(肝臓、肺、骨など食道から離れた臓器に転移している状態)を認める場合は従来の化学療法に加え、最近食道癌に対しても保険適用となった免疫チェックポイント阻害薬の投与によりさらなる生存率の向上が期待されます。

手術件数

腹腔鏡手術の割合

治療成績

【生存率】

治療成績
【生存期間 (月)】

全国の大規模施設と同等な良好な治療成績を常に維持しています。

臨床試験

全国規模の様々な臨床試験に参加しております。

  • JCOG1509:局所進行胃癌における術後補助化学療法に対する周術期化学療法の優越性を検証することを目的としたランダム化比較第III相試験
  • JCOG1704:高度リンパ節転移を伴う進行胃癌に対する術前 Docetaxel + Oxaliplatin + S-1 の第II 相試験
  • JCOG1711:漿膜下浸潤及び漿膜浸潤を伴う進行胃癌を対象とした大網切除に対する大網温存の非劣性を検証するランダム化比較第III相試験
  • JACCRO GC-08:切除不能進行性胃癌症例におけるニボルマブのバイオマーカー探索を含めた観察研究
  • YCOG1601:高齢者胃癌症例(75歳以上)に対する二次治療としてのラムシルマブ/パクリタキセル併用療法の探索的第Ⅱ相試験
  • YCOG1901:腹腔鏡下噴門側胃切除術double tract再建法の栄養面での有用性を検証する前向き観察研究