下部消化管グループ

大腸がんに関する専門領域の知識と技術を基に、根治性の追求と低侵襲性に加えて術後の生活の質(QOL: Quality of life)を考慮し、個々の患者さまのご希望に応えることを目標にしています。
ご高齢、糖尿病、脂質代謝異常や心臓、肺、肝臓、腎臓(透析)や脳などに併存疾患をお持ちの大腸がん患者さまも多くご紹介いただいております。コメディカルやそれぞれの専門科チームとのスムーズな連携のもとに、治療を進めています。

下部消化管グループ集合写真
  • 年間400件以上の手術(大腸がんの原発切除は300件以上)を行っています。
  • 腹腔鏡手術を積極的に取り入れ、体に優しい手術を行っています。(5名の内視鏡外科学会技術認定医のもと、大腸がん手術の約95%に腹腔鏡手術、ロボット支援下手術を施行しています。)
  • 可能な限り肛門を温存します(下部直腸がんに対し、85%の症例で肛門温存手術を行っています)。
  • 直腸がんに対して、ロボット支援下手術を行っています。
  • 進行下部直腸がんに対して、腹腔鏡下、ロボット支援下に側方リンパ節郭清を行っています。
  • 閉塞性大腸がんや局所進行直腸がんに対して、集学的治療を行っています。
  • 客観的なエビデンスを構築するために、臨床試験にも積極的に参加しています。
  • カンファレンス、チームミーティングや電子カルテを介して、医師、医療スタッフ間の情報共有がスムーズに行われています。

メディア掲載

  • 週刊文春 夏の特大号【ライバルが認める「がん手術の達人」58人~大腸・胃・食道編~】に於いて、当科の渡邉純先生(横浜市立大学附属市民総合医療センター)が掲載されました。
    http://shukan.bunshun.jp/articles/-/7048
  • 医療新聞社【最新治療データで探す 名医のいる病院2020】に於いて、当科の渡邉純先生(横浜市立大学附属市民総合医療センター)が大腸がんの名医として紹介されました。
  • 医療新聞社【最新治療データで探す 名医のいる病院2021】に於いて、当科の渡邉純先生(横浜市立大学附属市民総合医療センター)が大腸がんの名医として紹介されました。
  • クリンタル|名医を本気で探している人のための医師検索サイト(https://clintal.com/doctor/120612)に於いて、当科の渡邉純先生(横浜市立大学附属市民総合医療センター)が消化器外科 ・大腸がん腹腔鏡手術の名医として紹介されました。
  • がん@魅せ技(https://www.misewaza.jp/dr/00114.html)に於いて、当科の渡邉純先生(横浜市立大学附属市民総合医療センター)が紹介されました。
  • 当科の渡邉純先生(横浜市立大学附属市民総合医療センター)が、The Best Doctors in Japan(2020-2021)に選出されました。

当科の大腸がん診療の特徴

ロボット支援下手術(ダ・ヴィンチ手術)

当科では直腸癌手術に対するロボット支援下手術を積極的に施行しています。
ダ・ヴィンチ(手術支援ロボット)はアメリカで開発された最新鋭の内視鏡手術支援ロボットで、腹腔鏡下手術同様に身体への負担が少ない、患者さんにやさしい低侵襲手術を実現します。
ロボット手術の対象となる大腸疾患は主に直腸がんであり、特に肛門に近い下部直腸癌でそのメリットを最大限に発揮します。当院で導入している手術支援ロボットはDa Vinci Xi(インテュイティブサージカル社製)という最新機種となります。

ロボット支援下手術(ダ・ヴィンチ手術)のメリット

3D画像:
従来の腹腔鏡下手術は2次元の画像が基本でしたが、ダ・ヴィンチ手術では3次元画像による腹腔鏡下手術であり、奥行きのある、より立体的な高画質画像で手術を行うため、より正確かつ安全に手術を行うことができます。
特に直腸においては周囲には排尿機能や性機能を司る自律神経や血管が取り囲んでおります。これらの神経や血管を可能な限り温存することが術後の機能障害を残さないために重要です。
ダ・ヴィンチ手術では良好な視野によって繊細な手術が可能であり、このような神経温存手術にもメリットがあると考えられています。

ダ・ヴィンチカメラの先端には右眼、左眼が付いており、術者は3次元の視野を得ながら手術を行うことができます。

ダ・ヴィンチカメラの先端には右眼、左眼が付いており、術者は3次元の視野を得ながら手術を行うことができます。

関節機能が付いた鉗子:
従来の腹腔鏡下手術では長い鉗子を用いた手術であり、直線的な動きしかできませんでしたが、ダ・ヴィンチ手術では多関節機能をもった鉗子によって多彩な動き(関節の360度回転など)が可能であり、従来の腹腔鏡では困難であった手術操作が可能です。

ダ・ヴィンチの鉗子には多数の関節が付いており、多彩な動きが可能です。

手振れ防止機能:
ダ・ヴィンチ特有の手振れ防止機能により、スムースかつより微細な手術操作によって出血の少ない手術が可能になります。

術者の手による大きな振幅は、体の中では小さな振幅として再現されるため、より精密な手術が可能となります。

手術費用について

日本では2018年4月から保険収載され、当院は施設認定を受けているため、保険診療となります。費用は通常の腹腔鏡下手術と同様となります。
実際のロボット支援下手術(ダ・ヴィンチ手術)の執刀は、ロボット手術術者認定証を有し、当院で定めた術者基準を満たした者が行います。

担当医ご紹介

直腸領域のダ・ヴィンチ手術に関して、詳細は各担当医(准教授 渡邉 純、講師 菅野伸洋)までお尋ねください。

腹腔鏡手術

オペのイメージ

「腹腔鏡手術」とは、腹腔鏡という直径約1cmの細長いカメラをお腹の中(腹腔)に入れ、そのカメラからの映像をモニターに映して、そのモニターを見ながら行う手術のことです。この「腹腔鏡手術」の利点として、(1)おなかの傷が小さいこと、(2)手術後の痛みが少ないこと、(3)お腹のなかの環境に与える影響が少ないために手術後の胃腸運動の回復が早く、術後早期から食事が摂取できること、(4)入院期間が短く、仕事や家庭への復帰が速やかなこと、(5)腹腔鏡の近接、拡大視効果により、肉眼では見えにくい細い神経の温存など、より繊細な手術ができること、などが挙げられます。近年では多くの施設で、患者様にとって身体への影響が少ない「腹腔鏡手術」が選択されるようになってきています。
腹腔鏡手術の低侵襲性(身体に負担が少ないということ)は多くのエビデンスが報告されています。我々も確かな技術と経験を持ったスタッフが腹腔鏡手術を行っており、現在まで約5000例以上の腹腔鏡手術をおこなってきました。腹腔鏡下大腸切除術の教育・修練施設として若手外科医の指導、育成にも積極的に取り組んでいます。現在までに10名以上の日本内視鏡外科学会技術認定医(大腸)を輩出し、各々が横浜市立大学附属病院、横須賀共済病院、藤沢市民病院、NTT東日本関東病院、国立病院機構横浜医療センター、済生会南部病院などで責任者として大腸の診療にあたっています。現在、当科では年間400件以上の手術(大腸がんの原発切除は300件以上)を行っており、5名の内視鏡外科学会技術認定医のもと、大腸がん手術の約95%に腹腔鏡手術を施行しています。

当院医師のインタビューを掲載中

腹腔鏡下手術の適応

広範な他臓器浸潤例、巨大腫瘍(径10cm以上)は除外しています。

腹腔鏡下側方リンパ節郭清

進行下部直腸がんに対して、腹腔鏡下に側方リンパ節郭清を行っています。

近赤外光観察による腹腔鏡下大腸癌手術

インドシアニングリーンを静脈注射・局所注入し、近赤外光観察を行うことで、血管やリンパ管を蛍光させ非侵襲的に観察することが可能です。当科では、この手技を用いて、腸管血流の評価や、リンパ流観察を行っています。吻合部腸管の血流をより視覚的に評価することで術後の吻合部のトラブルを減少させることや、術中にリンパ流観察を行うことで、より適切な範囲のリンパ節郭清を行うことを目指しています。
緑色蛍光信号:中結腸動脈右枝に沿ったリンパ流

経肛門的直腸間膜切除術 (taTME)

直腸がんの手術では、狭い骨盤内の操作が必要となりますが、特に狭骨盤の男性や、肥満症例、腫瘍が大きい症例では骨盤深部の操作難易度が高くなります。その解決方法の一つのして、「経肛門的直腸間膜切除術(taTME:Transanal total mesorectal excision)」という術式が注目されています。taTMEとは、腹腔側と肛門側の両方から手術を行う方法で、当院では2チームに分かれ、同時に腹腔操作と経肛門操作を行っています。経肛門操作を行うことで、腹腔側からでは難しい骨盤深部の剥離を、より適切な剥離層を保ちながら行うことが可能であり、また、2チーム同時に開始することで手術時間の短縮が可能となり、より患者様への負担が抑えられると考えています。
手術方法のイメージ

<直腸癌のtaTME手術 (2チーム手術)> 直腸癌のtaTME手術

進行した直腸がんに対する治療戦略(術前放射線化学療法、術前化学療法)

局所進行直腸癌に対して、①原発腫瘍の縮小(局所再発の予防)、②ダウンステージ、③微小転移の制御などを目的として、術前放射線化学療法、術前化学療法を行い、手術へと繋げていきます。
下図のように、直腸癌に対して術前治療を施行することによって、直腸癌が消失することもあります(10-20%)。その場合は、患者さんと十分に話し合った上で、手術を施行せずに経過観察を行うという選択肢も存在します。

直腸がんに対する肛門温存手術

近年まで肛門に近い直腸がんに対しては、肛門も切除する「直腸切断術」が施行され、永久人工肛門となることを余儀なくされていました。最近では、今までであれば永久人工肛門となっていた肛門に近い直腸がんでも、一定の条件をみたせば、自分の肛門を残せる超低位直腸切除術、ISR(括約筋間直腸切除術)が行われるようになってきました。
これらの手術では縫合不全を予防し、良好な肛門機能を温存するため一時的な人工肛門を造設しますが、再発の無いことや肛門機能に問題のないことを確認して、約2-3か月を目途に一時的人工肛門を閉鎖する手術を行います。その後は、自分の肛門からの自然排便が可能となります。

診断から治療までの流れ

  • 消化器病センターを初めて受診された場合、まずは治療方針決定のために「がんの状態」、「全身の健康状態」について検査を行います。
  • 速やかに治療を開始するために、初診当日に可能な検査を行い、必要な検査(CT検査、内視鏡検査、MRI検査など)を予約します。
  • 治療方針は、専門医がチームで協議のうえ決定します。
  • 閉塞性大腸がんや局所進行直腸がんに対して、集学的治療を行っています。
  • 内視鏡治療の適応に関しては、内視鏡チームと綿密にディスカッションしています。

横浜市立大学病院付属市民総合医療センターのクリニカル・パス

  • 当院の大腸癌の術後平均在院期間は結腸癌6日、直腸癌12日です。
  • 術後の回復を促進するプログラムとなっています。
当センターのクリニカル・パス

大腸がんについて

当院医師による疾患啓発記事を掲載中

大腸とその区分について

大腸は、食道・胃・十二指腸・小腸から連続し、右下腹部から時計回りにお腹の外周を一周して肛門へとつながっています。長さは1.5mほどで、水分の吸収と便の貯留・排出などが主な機能です。
下図のごとく、大腸は、口側から盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸とならぶ「結腸」と、これに続いて肛門にいたる「直腸」に大きく分けられます。とくに直腸は便の貯留と排出に非常に重要な役割を担っています。

大腸の図

大腸癌取り扱い規約第9版から引用

 
大腸がんの症状について

大腸がんが小さいうちは、ほとんど症状がありません。がんが大きくなってくると、下血(肛門から出血する)、腸閉塞(腸がつまって便やおならがでなくなる)や穿孔などの症状がみられるようになります。

大腸がんの内視鏡写真
大腸がんの内視鏡写真
大腸がんの病期分類
  • ステージ0:がんが粘膜の中にとどまっている。
  • ステージⅠ:がんが大腸の壁(固有筋層)にとどまっている。
  • ステージⅡ:がんが大腸の壁(固有筋層)外まで浸潤している。
  • ステージⅢ:リンパ節転移がある。
  • ステージⅣ:遠隔転移(肝転移、肺転移)または腹膜播種がある。

大腸がんの治療方針

基本的には大腸癌治療ガイドライン(大腸癌研究会編、2019年版)に則った治療を行っていますが、個々の患者さんの状態に応じて最適な治療を提供しています。

術後合併症について

手術後には以下のような合併症が起こることがあります。

感染

手術後はお腹の傷やお腹の中に細菌感染を起こし化膿することがあります。膿(うみ)を外へ出す処置や手術が必要になることがあります。2018年の当科での創感染率は1.3%でした。他に、腸炎などにより入院が長引くこともあります。

縫合不全

吻合部(腸と腸を縫い合わせたところ)から腸液(便)が腸の外に漏れることを縫合不全といいます。縫合不全の状況によりますが、長期の絶食や体外からのドレナージ(お腹の中に漏れた腸液を外へ出すチューブを入れる処置)などが必要になることがあります。また、縫合不全の程度がひどい場合には、再手術をして腹腔内を洗浄し、ドレナージ、一時的な人工肛門*を造設すること(腸の縫合部より口側の腸をお腹の外へ出すこと)もあります。2018年の当科での縫合不全率は全体で 2.1%、直腸がんにおいては4.2%でした。
*縫合不全が治癒し、狭窄や再発のないこと、肛門機能を確認したうえで、約3ヶ月後に人工肛門閉鎖手術を行えば便がもとの肛門から出るようになります。

術後出血

吻合部(腸と腸を縫い合わせたところ)からの出血に対して、大腸内視鏡による内視鏡的止血術や再手術による止血を行うことがあります。術後にお腹の中に出血が起これば、再手術をして出血を止める処置が必要になることがあります。また、出血量が多い場合には輸血を要することもあります。 尚、2018年の当科での術後出血は0.6%の患者さまに発生しました。

腸閉塞

術後は一時的に腸の動きが悪くなり、腸管麻痺が遷延することもあります(麻痺性腸閉塞と言います)。また、腸と腸や、腸とお腹の傷が癒着したり、捻れたり、腸がはまり込んだり、など、様々な原因の腸閉塞が生じることがあります。腸管の減圧目的で、鼻から胃や小腸にチューブを入れる処置や、手術が必要になることがあります。尚、2018年の当科での術後腸閉塞は4.7%の患者さまに発生しました。
がんの部位、進行度や併存疾患(持病)の程度や全身状態などによって、上記以外の合併症を生じることもあります。

大腸がんに対する化学療法

大腸がんに対する化学療法は、近年飛躍的に進歩しています。次々と新しい抗がん剤が承認され、新しい治療法も開発されています。大腸がんの化学療法はここ数年で最も進歩した分野です。当科でも、大腸癌治療ガイドライン(大腸癌研究会編、2019年版)に則った治療を基本とし、個々の患者さんの状態に応じて最適な治療を提供しています。